2004年にたきコーポレーションに入社して以来、社内外から注目されるグラフィックデザイナーとして活躍してきた木村高典さん。2014年からはブランディング業務に携わり、現在はIGIのCBO /クリエイティブ・ディレクターとして、多様なプロジェクトを横断しながら、組織デザインやパーパス策定などの領域に深く関わっています。
グラフィックからブランディングへと領域を広げてきた木村さんに、日々の業務内容や特に印象に残っているプロジェクト、IGIというチームの特徴、そしてこれからの組織のあり方についてお話を伺いました。
Speaker
木村 高典Takanori Kimura
Chief Branding Officer, Branding Director
2004年TAKI CORPORATION入社。
Chief Branding Officer, Branding Director2004年TAKI CORPORATION入社。広告クリエイティブの企画・デザインに携わり2014年から企業・団体のブランデイングに従事。編著に『デザインじゃないデザインのはなし』(メディアパル)。JAGDA会員。NY ADC, Clio Awards, LIA, One Show Design, ADFEST, HKDA global design awards, 等受賞。
これまで携わった中で、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?
木村:どのプロジェクトも印象深く、多くの気づきがありますが、その中でも特に印象に残っているのが、ぐるなびさんのパーパス策定を含むリブランディングプロジェクトですね。
>> 株式会社ぐるなび|リブランディング・浸透ツール制作
木村:このプロジェクトでは、経営層とともに企業のパーパスを策定し、それを実行可能な理念体系と行動指針として設計していきました。トップの意志と現場の実感がかけ離れないよう、次世代のリーダー層からも意見を取り入れ、組織全体の共感と納得を得られる形を目指しました。経営層の思いと現場の実際をつないでいく過程で、「何が本当の課題なのか」「どうすれば組織が変わるのか」といった構造的な問いに向き合う視点が、自然と磨かれていったように思います。
また、経営層のみなさまとの意見交換を重ねる中で、自分たちの中でも「理念体系をどのように構造化し、どう機能させるか」という設計思想が整理され、以降のプロジェクトにも応用できる実践的なフレームとして定着するきっかけとなりました。
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では、IGIとしての長期的な目標を教えてください。
木村:目指しているのは、いわゆる“統制型のビジネス組織”とは少し違ったあり方です。もっと自由度が高く、ある種“組織に見えない組織”というか。とはいえ、それは単なる放任ではなくて、関係性が自然に回っていくような場や制度の設計を段階的に模索していきたい、というイメージなんです。たとえば、IGIに何かしらの“軸”があるとしたら、その軸の近くにいるのが私や、代表の(井上)元気さん。その周囲には、ゆるやかに関わる人たちが層のように広がっていて、それぞれの距離感で関与している。そんな構造が理想です。
管理や評価といった明確な統制はなく、明文化されたルールも最小限にとどめながら、むしろ応答的な関係性のなかで自然と成立していく“ルールらしきもの”を大切にしたい。表からは見えにくいかもしれませんが、自由や関係性を支えるための制度設計や仕組みが裏側でしっかりと機能している、そんなイメージですね。
なるほど。“見えないけど機能している”仕組みがあるわけですね。
木村:かなり話が飛躍しているかもしれませんが、そうなれば、きっとみんなが“クリエイションする楽しさ”をもっと感じられると思うんです。いつか人生の終わりに「IGIで過ごした時間がいちばん生き生きしてたな」って思ってもらえるような。つらかったけどよかった、というより、純粋に「あの時間はよかった」と思ってもらえるような時間。すごく人間的で、開かれていて、柔軟で——でも一方で、複雑なものが自然に絡み合っている。だからこそ、支える仕組みは丁寧に整えていく。そんな環境があれば、関わる人たちが「IGIがあってよかったね」と思ってもらえる組織になれるんじゃないかなって。……まあ、たぶん、それには何年もかかりそうですけどね(笑)。