内藤:まず、ワークショップでは、世間からの評価や提供している価値を洗い出しました。さらにそこから「お客様に対する思いとは何か?」を深掘りし、「お客様目線のしあわせ」を改めて見つめ直したんです。
安心や安全といった基本的な価値は、もともとユニバーサルホームさんの大前提としてありました。ただ、それだけで終わらず、その先にあるストーリーまで言葉にする必要があると感じました。家族の形や価値観は、人それぞれ。そうした多様性について話し合いながら、少しずつ言葉を紡いでいきました

ユニバーサルホームが「しあわせ」を言葉にするまで。
「考え続ける」ことで描く、これからのブランド。
ハウスメーカーのユニバーサルホームは、創業30周年を迎え、ブランドメッセージを刷新しました。
「そのしあわせを、考え抜く。」
これを期に実施したリブランディングプロジェクトでは、ブランドの方向性から営業のあり方までを見直し、IGIが伴走しながら何度も対話を重ねてたどり着いたメッセージです。そこには、企業として大切にしたい姿勢と、未来への指針が込められています。
三浦亨社長は、このブランドメッセージついて以下のようにコメントしています。
では、この言葉はどのようにして生まれたのか。
このブランドメッセージが生まれたプロセス、そしてこれから描く未来について、プロジェクトメンバーであるユニバーサルホームの細谷達一郎さん、赤石奈緒さん、そしてこのメッセージを紡いだIGIのコピーライター・内藤拓也が語り合いました。

しあわせを起点に紡いだブランドメッセージ
今回のリブランディングでは、「そのしあわせを、考え抜く。」というブランドメッセージが生まれました。内藤さんは、ユニバーサルホームの方々が参加されたワークショップを通じて、「自分たちのすべての仕事は“お客様のしあわせ”から始まる」という点に、この会社の核があると気づかれたそうですね。どのようにして、それを見つけられたのでしょうか?



さまざまな「お客様のしあわせ」が出発点だったんですね。細谷さんと赤石さんは、実際にお仕事の中でそういった“しあわせ”を実感する瞬間は、どんなときでしたか?
細谷:私が所属するのはフランチャイズ本部なので、お客様と接する機会はあまりありませんが、直営部門や加盟店さんを担当したり、加盟店さんから話を聞いたりすると、よく出てくるのが完成した住宅の引き渡しセレモニーの話です。お子さまや奥さまがサプライズでご主人に手紙を読んで泣いてしまうシーンや、営業担当がもらい泣きしている場面があるんです。そうした場面を見聞きするたびに、「私たちの仕事って、本当に素敵だな」と感じていました。それが今回、やっと言葉にできたなと思います。
赤石:私もそうしたエピソードを聞くことがありますし、それも印象的ですが、個人的には、高校時代の友人が7年前にユニバーサルホームで家を建てたことが、特に強く心に残っています。身近な人がしあわせを実現する姿を見て、「しあわせを形にするって、こういうことなんだ」と実感しました。入居後もやり取りが続いていて、「今もしあわせに暮らしているんだな」と身近に感じられる貴重な経験でした。
内藤:ワークショップの中でもおふたりのエピソードのようなお話をさまざま伺えましたし、今回のリブランディングの過程で何気なく出てきた言葉や、ワークショップ以前にモデルルームを見学させてもらったときの体験など、いろんなところでユニバーサルホームさんの想いを感じ取るプロセスがありました。そこで、表には出ていなくても、お客様への熱い気持ちや「お客様目線」という姿勢はもともと備わっていて、ただ外に出せていないだけなんだなと。そういった気づきをプロジェクト全体から受け取ったので、それをブランドメッセージとして表したいと思いました。

実際にブランドメッセージやボディコピーを制作するにあたって、特に注力したポイントはどこですか?

内藤:やはり「お客様目線」をどう具体化するかが、いちばんのポイントでした。お客様のしあわせに正解はありません。だからこそ、こちらから一方的に「こうすべき」と押し付けるような文章にはしたくなくて。むしろ、「お客様目線とはこういうことだ」という姿勢を示す宣言にしたいと思いました。
そのために、ワークショップでいただいた情報や定例会での議論などをつなぎ合わせながら、ずっと模索していました。答えを出さない文章を作るということは、まさに答えのない作業を続けるような感覚。もちろん文章として美しいかどうかの判断はありますが、「このスタンスで合っているか」を何度も確認しながら進めました。そういう意味で、私ひとりではなく、皆さんと一緒に作り上げた言葉だと思っています。

細谷:その言葉はうれしいですね。私どもはいわゆる注文住宅ですので、すでにできあがった住宅を販売するわけではありません。だからこそ、お客様と一緒に考え、形にしていくプロセスがとても大事なんです。内藤さんがおっしゃった「答えを押し付けない」という姿勢は、私たちの仕事にも通じる部分だと強く感じました。
赤石:まさにそうですね。もしこちらが一方的に答えを出してしまったら、「こんないい家だから買ってください」という押し付けになってしまう。本当の意味でお客様に寄り添えなくなります。お客様のしあわせを引き出し、一緒に考えていくという姿勢が宣言として言葉になっているのが、とてもいいなと感じましたね。
「嘘のないコミュニケーション」が新しい可能性を生む

細谷:今、ふと思い出したのですが、プロジェクトの前段でIGIさんが弊社の代表にインタビューをしてくださったり、モデルハウスを案内して「こういう課題があるんです」とお話ししたんですよね。そのうえで、「ではこういうワークショップをやりましょう」と準備してくださったIGIの山田(季世)さんの文章があったのですが、それが本当に素晴らしかったんです。



細谷:それで社内朝礼で全員の前で読み上げて、「このメッセージからスタートして、今みんなで進めているところだから、完成を楽しみにしていてほしい」と伝えました。
赤石:そうでしたね。覚えてますよ、そのメッセージを最初に見たときの細谷さんの、すごくうれしそうな顔も(笑)。
内藤:そんなことが(笑)。すごくうれしいです。
細谷:それくらい感動していました(笑)。この取り組みのスタートがこれで本当によかったなと思いましたね。そこから丁寧にやり取りを重ねていって。
内藤:そうでしたよね。ボディコピーについても、皆さんから本当にたくさんのご意見をいただきました。特に印象に残っているのは、「そもそも家族とは何か?」といった根本的な問いが多かったこと。そうした深い議論があったからこそ、言葉をじっくり磨き上げて、より良い形にできたと感じています。
細谷:幹部メンバーの意見も含め、包み隠さずそのままお伝えしていましたからね。みんな遠慮せずに言いたいことを言いますし(笑)、まとめるよりも、そのまま投げたほうがいいと思ったんです。格好つけても仕方ないですし。正直、ご負担をかけているなとは思いながら……。
内藤:いえいえ、あそこまで考えている過程を明け透けに見せてもらえることって、あまりないのでいい意味で驚きましたし、逆にいい刺激になりました。全部開示していただいたほうが、意外と多くの気づきが得られるものだと気が付きました。


細谷:私どものフィードバックをお渡しすると、次の打ち合わせで「この内容はこういう意図と認識しました」とまとめて返してくださるんです。その内容も素晴らしくて。
赤石:毎回、IGIさんとの打ち合わせは、なんだかカウンセリングを受けているような気持ちで参加していました。自分たちだけではうまく言葉にできない部分を、次のミーティングできちんと形にして返してくださる。それでどんどん精度が上がって、私たち自身の理解も深まっていったんです。だから、「私たちの議事録を包み隠さずお伝えしておけば、内藤さんが方向を示してくれる」と思えるくらい、信頼できる先生のような存在でした。
細谷:IGIさんは、かっこつけたり、取り繕ったり、ちょっと隠したり──そういう必要がないと思わせてくれるメンバーでしたよね。
赤石:全部くみ取っていただけるから、安心して話せました。
内藤:恐縮です。細谷さんがおっしゃった通り、何も包み隠さず向き合ってくださったのが本当に印象的で、IGIとしても「嘘のないコミュニケーションだな」とずっと感じていました。ブランディングは会社の方向性を左右する大きなプロジェクトなので、その土台になるのはやっぱり「嘘がないこと」だと思います。普段の会話では、少し背伸びをしたり、本当は言いたいけど言わないこともありますが、そういう遠慮なく話せたのは理想的でしたし、ユニバーサルホームさんとはまさにそういう空気があったと感じています。
浸透フェーズ、そして次のステップへ

ブランドメッセージやボディコピーが完成した今、内藤さんはプロジェクトを振り返って得た学びや気づきはありますか?
内藤:学びというよりは、自分自身も挑戦させてもらった感覚があります。それくらい思い入れの強いプロジェクトでした。ユニバーサルホームさんのブランドブックを作るときも、最初は「IGIメンバー総出で行こう」という話になるほど、IGI内のメンバーの熱量も高かった。そんな方々とご一緒できたことは、自分にとって大きな経験でした。そして何より、あのときのフィードバックの量と熱量が強く印象に残っています。「本気で会社を良くしたい」という気持ちを肌で感じ、自分もその熱量を伝えていく存在でいなければ、と。今もその経験が、ブランディング案件に向き合うときの判断軸になっています。
細谷:いやあ、いい話です。
赤石:本当にうれしそう(笑)。新しいメッセージは、まさに「お客様に寄り添う姿勢」そのもの。「ここに住んだらしあわせに暮らせます」「その手助けをしたい」という宣言としてしっくりきますし、立ち返る場所にもなっています。これから社内に浸透して、各社員が自分の言葉で語れるようになれば、もっと大切にしていけると思いますね。

細谷:そうそう。そして実は、私はやりきった気持ちでいるんですよ(笑)。ブランディングから営業まで筋が通った感覚があって、自分の中で矛盾なく説明できる状態になったんです。これまでは想いはあったけれど言葉にならず、営業もそれぞれバラバラに伝えていました。本当に大事なのはその先にある部分だよね、とやっと言葉にできた感覚というか。
赤石:本当にそうですよね。
内藤:先ほども言いましたが、ワークショップなどのヒアリングを通じて「本当はここを目指しているのに、まだ表に出ていない部分」がたくさんあると感じました。それを拾い上げるのが私たちの役割だと思っていましたし、ユニバーサルホームのみなさんが真摯に向き合ってくれたおかげで、嘘のないコミュニケーションができ、こうしてブランドメッセージを作り上げることができました。
そうして生まれたブランドメッセージが、今まさに社内に広がっているんですね。
細谷:リブランディングに関わったメンバーは、このプロセスを体験しているので自然と浸透していますが、現場のメンバーには腹落ちするまで少し時間がかかるかもしれません。でも、全員が想いを持っているはずなので、お客様との関わりの中で少しずつ形になっていくと思います。これからも発信を続けて、メンバーの心に引っかかるきっかけを作り、みんなで少しずつ良くしていきたいですね。最終的には、社員一人ひとりが「これはお客様のしあわせにつながるかな?」「もっと良くするにはどうすればいいかな?」と自分で考えて動けるようになるのが理想です。答えがない中でも、このメッセージを指針にして進めば、きっと正解に近づいていけると思います。
赤石:私も同じ想いです。この言葉が営業や社員に浸透して、自分の言葉で語れるようになってほしい。もっと大切にして、可愛がってほしいです。そして5年後、10年後には「しあわせな暮らしができるハウスメーカーといえばユニバーサルホーム」と言われるようになったらうれしいですね。

内藤:これからが本番だと思うので、ぜひ一緒に並走させてください。
細谷・赤石: こちらこそよろしくお願いします。
内藤:今日はありがとうございました。

取材・執筆:船寄 洋之
撮影:鈴木 渉

