2009年にたき工房(現たきコーポレーション)に入社し、現在はカンパニー代表としてIGIのメンバーを牽引する井上元気さん。ブランディングプロデューサーとしてプロジェクトに入ることもあるプレイングマネージャーです。未知の領域にも恐れず挑戦する姿勢は、周りのメンバーにも影響を与えています。
井上さんの考える、IGIのビジョンとはどのようなものなのでしょうか?
Speaker
井上 元気Genki Inoue
カンパニー代表/Brand Producer
2009年TAKICORPORATION入社。ナショナルクライアントをはじめさまざまなクリエイティブ案件に携わる。たき工房のブランディング事業の立ち上げに携わり、プロデューサー兼プランナーとして、ブランディング案件全体の企画や進行等を一貫して担当。2023年にブランディング領域に特化した社内カンパニー「IGI」の代表に就任。2025年度より文化服装学院ファッション流通専門課程 講師。
IGIでの仕事は「大変だけど面白い」
IGIの始まりは、2015年頃からブランディング事業の立ち上げに参画されたのが原点と伺いました。どういった経緯で加わったのですか?
井上:当時よく一緒に仕事をしていた先輩(後の上司)がブランディング領域に踏み出す事業部ゼロの立ち上げに取り組むことになり、自然な流れで私も参加しました。
その頃は広告代理店から引き受けるグラフィックデザインの仕事が大半を占めていて、付き合いの深いクリエイティブディレクターが多く担当していたのがブランディング系の案件だったんです。そのため私も、大企業のロゴリニューアルやガイドライン作成、タグライン変更に伴うデザイン作業など、グラフィックの中でもブランディングに重きを置いた案件を多く手掛けていました。
ただ、ブランディングに興味はあったものの、当時はあまり知識がありませんでした。とくにパーパスについては全くの未経験。そこで、ブランディング専門の会社と一緒に仕事をした際に、私もクライアントとワークショップに参加しました。やり方を教わりながら合意形成や集約のプロセスを経験し、案件を通して知見を深めていきました。
現在は、代理店を介さず自社でブランディング業務を受託する割合が増えていると伺いました。仕事のスタイルは変わりましたか?
井上:大きく変わりました。以前は前提整理が終わった状態でグラフィックだけを担当することが多く、決められた枠の中でレイアウトする役割でした。グラフィックデザインに専念する面白さもあるのですが、いわゆる下請けとして受動的になっている自分もいたと思います。
自社でブランディングを引き受ける場合、当然、前提整理から関わることになります。工程が多く大変ですが、クライアントとのコミュニケーションが増え、主体的な動きが求められることにやりがいを感じます。前提に携わるとグラフィックデザインの考え方や仕事の進め方も変わってくるので、今の仕事はとても面白いですね。
IGIを一言で表すと、どのように表現できると思いますか?
井上:この間、インターン生にIGIのUSPをまとめる課題を出したら、インターン生がいろいろな人に「IGIを漢字一文字で表すと?」と聞いていました。そのときは、私は「変」と答えました。
私たちはコンサルティングのような業務も行っていますが、基本はクリエイティブ集団だと思っていて、クリエイティブ集団にはちょっと変わった人たちであってほしい、という思いがあるんです。自分が顧客なら、かしこまってありきたりのことしか言わない人たちより、何かを変えてくれるようなワクワク感のある人たちにブランディングを任せたいので。お客さまを変える、そして自分たちも変わった存在であり続ける、という意味で「変」です。
最近は、ブランディングというものを月曜日会社に行くのが楽しみになる仕事にしたい、ということをCBOの木村とよく話しています。ブランディングって、普通にやるとどうしても真面目で堅苦しい方向に進みがちです。もちろん重要な仕事ではあるけれど、自分たち自身がワクワクしながら楽しく取り組めるほうが健全だと思うし、そういう空気はお客さまにも伝わるので、楽しくあるということは大切にしています。
ブランディングを通じて社会課題の解決を
今後、IGIをどんな組織にしたいですか?
井上:企業の未来を変える可能性のあるブランディングですが、その先には人や社会があります。仕事として引き受けているのは企業のブランディングだけれども、それを通じて社会課題の解決にも貢献できるクリエイティブ集団でありたい、ということは常々考えています。
そこで、社会課題を解決する方法を学ぶために昨年度から大学院に通っています。年末には「TAKI SMILE DESIGN LABO」でネパールに足を運び、学校でクリエイティブの授業を実施してきました。私自身、インプットが必要だと感じているので、いろいろな世界に意識的に飛び込んでいます。
今年度からは、文化服装学院大学で非常勤講師に着任しました。年間30コマ、ときにはゲストを迎えながら、ファッション業界を志す学生たちへプロモーションに関する講義を行っています。これまでの経験から伝えられるものがあればと思い講師をお受けしましたが、若者の熱量とセンスには私のほうが刺激を受けています。
素晴らしい行動力ですね。メンバーとして何ができるか考えさせられます。
井上:ただ、これはあくまで私のビジョンなので、メンバーがどうなりたいか、何をすべきかは自分で見つけてほしいです。興味のないことを強制しても意味がないので、彼らが自分で道を切り拓くための選択肢を提供したり、行動で示したりすることが私の役割だと捉えています。
社会貢献に取り組む企業を迎えて開いている勉強会もその一つです。大学院でネットワークも広がってきたので、深めたい分野があれば、IGIのメンバーにも積極的に専門家を紹介するようにしています。