ブランドデザインカンパニー「IGI」- IGI Brand Design Partner
IGI Brand Design Partner

そのパーパス、本当に世界がよくなりますか!?
パーパスは楽しみながらつくれるもの

IGIの前身、たき工房「ブランドデザイン室」時代から、パーパスブランディングの旗振り役として七転八倒してきたふたり。ブランドデザイン専門のカンパニーとして独立した今、ふたりの視線はどこに向いているのか!?IGI立ち上げの今、聞いておきたいリアルボイス。

CBO / Creative Director

木村 高典Takanori Kimura
2004年たき工房入社。
 
広告のクリエイティブ全般の企画・デザインに携わる。2014年から企業・団体のブランデイングに従事。ブランド・アナリストとして、デザインブランディングで企業の未来を設計する。JAGDA会員。NY ADC, Clio Awards, LIA, ADFEST, HKDA global design awards, One Show Design, A’l1pick Awards等受賞

カンパニー代表 / Branding Producer

井上 元気Genki Inoue
2009年TAKI CORPORATION入社。
 
ナショナルクライアントをはじめさまざまなクリエイティブ案件に携わる。たき工房のブランディング事業の立ち上げに携わり、プロデューサー兼プランナーとして、ブランディング案件全体の企画や進行等を一貫して担当。2023年にブランディング領域に特化した社内カンパニー「IGI」の代表に就任

第1回のテーマは、ブランディングに特化したIGIというカンパニーを立ち上げた理由とか経緯とか、今後の話をラフな感じで聞きたいなあと。ちなみに、おふたりはIGIの「長(おさ)」でいいんですよね!?

木村:IGI村の、おさ?

井上:ですね。エラそうぶるつもりはないけど(笑)“おさ”のふたりが答えます。昔からたき工房がやっているクリエイティブ事業と、このブランディング事業は少し毛色が違うというのがあったんですね。

木村:けっこう新しいチャレンジだった。

井上:ブランディング事業は、2010年くらいからやっていて、7~8年くらい経ってじわじわブランディングを必要とする企業が増えてきた。改めて、より自分たちの目指すべきことを実現しやすくするために、そして、もっと深いところで企業に貢献できるようにIGIというカンパニー立ち上げたんです。

木村:もうひとつの側面で言うと、メンバーみんなが働きやすい環境をつくろうと。ブランディング事業は、それまでのたき工房という組織での働き方とちがう働き方をしていました。つまりは、長期スパンの仕事だったり、規模が大きい仕事だったり。そういう仕事がしやすいチームをつくりたかったし、あと、単純に待遇を良くしたいと思ったときに独自組織がいいと。

なるほど。話はIGIの立ち上げ前に戻りますが、たき工房内にブランドデザイン室ができた当初って、ブランディングがそこまで流行ると思っていましたか?

木村:え~と、正直、未知数でした。ただ、当時初めて受けた仕事は、今も継続してるんですよ。それって6~7年かけてブランディングをやり続けているっていうことで。そういう案件もあるので、改めて振り返ってみると、ブランディングの必要性を信じてスタートして正しかったなと思っています。

木村:もともと僕らは広告つくってて、広告ってブランディングしてるんじゃないかって思っていたんです。でも、企業とか商品の行く末を考えたときに、一つのメディアで発信するだけでいいんだっけ?って思うようになった。より大きな視点で企業とかそのまわりを良くしていくことが、ブランディングなんじゃないか。そうやってだんだん考え方が変わっていったんです。

売れるパッケージってなんだよ、って。売れる商品も一緒につくりたい。(木村)
 
自分たちから手を挙げました。(井上)

以前、「広告は売るためのもの」っていう概念に、木村さん、疑問を呈していましたよね?

木村:(急に振られてオロオロする)

井上:気難しいひとなので(笑)。遅刻はするんですけどね(笑)

どういう話かあらためて聞いてもいいですか?

木村:えーと。「売れるパッケージをつくってください」って言われたことがあって、売れるパッケージってなんだよ、って思って。それよりも、売れる商品も一緒につくりたいよ!っていう考えたことが、ブランディングにつながったのかな。お客さんと、今あるいろんな商品の中で、ほんとうにその商品、その立ち位置でいいんですかね、っていう会話をしたことを覚えています。

IGIというブランドデザインカンパニーは、そういう、これまでの仕事への疑問から出発したと。実際、仕事がかたちになって、最近は広がりと深みが増していますが、立ち上げを決めたときって、どんな感じだったんですか?

井上:以前から会社内で「ブランディングに特化した会社を」という話は、ふんわり出てたんです。どうせやるなら会社から言われるより前に動きたいと、自分たちから手を挙げました。この思いをどういう順番で誰に話そう、って考えたとき、シンプルにオーナーに言おうと思って。深夜に連絡して「ちょっと話したいことがあるから明日時間ください」と。初めは「会社辞める」って思われたみたいでしたけど(笑)、そうじゃなくて、ブランドデザインカンパニーを、たき工房の社内カンパニーとして立ち上げたいって伝えました。

オーナーはすんなりOKしてくれましたか?

井上:やりたいことを支持してくれましたね。

それで社名やメンバーを決めて、2023年3月からカンパニーになると。ちなみに、IGIという社名はどうやって決まったんですか?

木村:IGIのメンバー全員(19人)でアイデアを出して、80案くらいの中からみんなで選考していきました。

IGIって、異議ありの異議ですか、それとも意義深いの意義ですか?

井上:それについては、聞いた人や見た人それぞれのいろんな解釈があっていいと思ってます。

木村:まんなかのGは「元気」のGなのでは、という説も耳にしたのですが、実際のところどうなんでしょう!?

井上:これ、お前のイニシャルじゃないかって言われたこと、あります(笑)。I(いのうえ)G(げんき)I(イキってる)とか。でも、それも1つの解釈でいいんじゃないですか。

全員:(笑)


IGI以外の、最終候補は BBB と ブランドデザインラボ だったと。

井上:最後は僕が預かってフラットに評価して、いちばんふさわしかったのがIGIでした。ブランドデザインをしていく会社として、「存在意義」を考えたりこれまでの概念に「異議」を唱えながら歩んだり。それが集約された社名だと思います。匿名なので、誰のネーミング案なのかはわからないんですよ。ロゴは、アイデア出した人が最後までつくりこまないといけないから公開しましたけど。

この内容はバリューでいいんだっけ、ニーズでいいんだっけ、と、そのつど考えてますね。(木村)
 
客観視することって、そのなかにいると難しいんですよ。(井上)

話は変わるのですが、IGIがパーパスブランディングを選んでいる理由は?

井上:元々は僕たちも教えて頂いた概念なのですが、パーパスっていう言葉を知ってから、それが先々世の中に必要とされるだろうと思って活動してきて、コロナのタイミングになって、急にパーパスが市民権をとってきましたね。

パーパスを決めるプロセスそのものに考えをめぐらすこともありますか?

木村:あります。単純化していくとベン図で示されるように、左がバリュー、右がニーズとなる。そこに重なるものをみんなで考えよう、というのがベーシックなプロセスです。


木村:ただ、バリュー、ニーズの導き方自体は僕たちが独自であみだしてきました。あと、この内容はバリューでいいんだっけ、ニーズでいいんだっけ、と、そのつど考えてますね。それで、フォーマットを更新しています。

井上:そうそう。バリューとニーズっていうフォーマットはあるんだけど、企業によって考え方や文化が違うので、オーダーメイドになってます。毎回ちょこちょこ変えていて、プランニングチームが頭を使うところなんです。

IGIだからできるパーパスの導き方を大切にしているんですね。パーパスを導くためのワークショップって、実際、どんな感じなんですか?

木村:ちょうどたきコーポレーション全体のパーパスをつくる社内ワークショップを、IGIがファシリテーションしていて。元気さんは受ける側のメンバーとしてワークショップに参加してるよね。

井上:そうなんですよ。僕も参加してみて改めて思ったんですけど、自社のことってマジで分からない。もちろん僕は結構な数、ブランディングのワークショップやらせてもらってるんですけど、自社のこととなると急に分からなくなる。

意外に感じるのですが、それはどういった理由なのでしょうか?

井上:客観視することって、そのなかにいると難しいんですよ。改めて、ブランディングを他社に頼む理由が分かりました。

木村:ワークショップって、デザインやコピーのつくり手である自分たちが、相手を認識するために、相手の正体を発見していく過程なんですね。僕らパーパスだけつくってるんじゃなくて、デザインやコピーをつくりながらやってる。だから、自信を持って「つくる」段階になった時に打ち込めるというか。

パーパスをつくって、最後に、デザインやコピーで魔法をかける、って感じですか?

木村:そうかも(笑)。クリエイティブで最後、感動を与える。

井上:僕はプロデューサーなので、メンバーのデザインやコピー、初めて見るとき、今でもわくわくするんですよ。パーパスつくったあとのアウトプットって、わくわくさせる、楽しませるものであるほうがいいですよね。

あなたたちのは楽しい、時間が短く感じるって言われたことがあります。(井上)
 
僕らがつくろうとしてるのって、楽しいものであるはずなんですよ。世界が良くなるためのものだから。(木村)

ほかのブランディングのワークショップって、参加したことあります?違いを感じました?

井上:スタンスが違う、というのはありますよね、やっぱり。やる気がない人を注意するとか、ホスピタリティのないワークショップはマジつらかったです(泣)。それとか1回5時間を、5日間。ファシリテーションがあまりなくて、フレームを丸投げされて進んでいくのとか。

木村:ワークショップを行う団体ごとに、ほんと、違いますよね。いずれも間違っているわけではなく、相性の問題もありますよね~。

IGIのワークショップは楽しませようっていう思いがある、エンターテインメントというか。

木村:だって、みんなで集まって3時間もやるんですよ。楽しくしないとつらくなっちゃいますよ。

井上:実際、いくつかの団体のワークショップを経験した方から、あなたたちのは楽しい、時間が短く感じるって言われたことがあります。

木村:僕らがつくろうとしてるものって、楽しいものであるはずなんですよ。世界が良くなるためのものだから。


ブランディングを駆動させていくために、IGIとしてはパーパスが最適だと考えていますね。パーパスって今は流行っていますけど、今後どうなると思います?

木村:パーパスに代わる何かが出てくるのは、結局、マーケットがそうするだろうけど、大事なものは変わらないと思うな。
 
今、パーパスブランディングが広まり始めて、時々、これ、中身スカスカなんじゃないかと思うことがある。そこには美学とか、哲学が必要なんですよね。しっかりとした意見を世の中に対して言える企業を日本につくるのが、次のステージなんじゃないかな。

井上:今、ほんど、猫も杓子もパーパスなんですよね。経営者向けの講座とか、マーケの講座とか、すごい勢い。僕らが始めたときは、10人いたら1人、2人しかパーパスのことを知らなかったけど、今はほとんど知っている。依頼者も以前は広報さんが多かったけど、今は経営戦略室とか。勉強してこられる担当者の方も増えたし、書店でも本が増えたし。いいことなんだと思います。ブームに乗りながらも、企業を見つめなおすときに来ているんですよね、今って。

流行りに乗っかってもいいと。でも、いざパーパスをつくるとなると、大変ですよね。さっきあったように、つくる過程でIGIは、いろいろな仕掛けをつくりながら、楽しくパーパスを導き出していくと。それがIGIらしさというか。

木村:いいまとめですね。

ありがとうございます。

井上:まとめに入りましたね(笑)。今まで理念とかって、経営層だけで決めている企業が多かった。トップダウン、ですね。それが悪いことではないですが、一人ひとり、世の中に対してどうあるべきか、改めて社員全員で考えることが大事になってきています。それが、パーパスをつくる意義なんだと思います。

木村:たき工房としての広告クリエイティブをベースとしている僕らは、1個のアイデアを考えるときのブレストがベースなんですよ。そういうものが働いて、いくつかの問いができて、答えが導き出される。

いままでデザイナーやコピーライターがやっていたことを、共有財産にするみたいな?

井上:その感覚ですね。まじめに理論だけやると、パーパスのブランディングってものすごく退屈なものになる。それが、クリエイティブというアウトプットにつなげるやり方をしてきた僕らだから楽しく変えられるし、相手と共有しながら歩んでいける。

木村:デザイナーってめちゃくちゃ考えているんですよ、ただ、言語化することがへたくそで。そういう試行錯誤を、ワークショップの場でも共有していくというか。クリエイターならではのやり方でワークショップをつくっていくと、ふつうに机で考えるだけじゃない幅でパーパスが導き出せる。それは、クリエイティブの会社にしかない強みでしょうね。

井上:よく、コンサルとの違いを聞かれるんですが、僕らはデザインすることを大切にしている。理論を優先するよりも、楽しくクリエイティブに。そこが僕らの個性ですね。だから、パーパスの流行によって発注内容が複雑化してきてはいるけれど、立ち返るべきはクリエイティブ、楽しさ、だと思っています。

パーパスブランディング、どのフェーズが一番楽しいですか?


木村:デザインしてるときはオリエンが一番楽しかったんです。あれも、これも、提案できるぞって。今は、組織や企業のどのツボを押すと変わっていくんだろうと、ツボを探しているときが難しくもあるし、楽しくもありますよね。 

ツボは仮説みたいなもの?ずれるときもありますか?

木村:もちろんあります。ワークショップを重ねていく中で、最初に、「ここのツボがいちばん効くところじゃないかな」って思っていたけど、途中で、別のツボが必要になることは、けっこうある。だから最初にたてた仮説に向かっていくには時間がかかるなとか。

井上:僕も木村さんが言っていることと近くて、例えば、肩を痛めているのにまったく別のところを治療されると、あれ、そこじゃない、ってなる。ワークショップで最初に「あなたたちの存在意義って何ですか?」って聞いても、すぐに出てこないので、けっこう別のとこを押し続ける。で、最初は、参加する人たちも「あれ、これどこ効いてんの?」ってなるんだけど、アウトプットして「だからこうなる」を示すと、参加者の迷いが一気に晴れるというか、それを見る瞬間が、毎回楽しみですね。

本日はありがとうございました。

 

 

(文/つかもとちあき)

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