ブランドデザインカンパニー「IGI」- IGI Brand Design Partner
IGI Brand Design Partner

普段は見ることがあまりない
IGIのVI(ビジュアルアイデンティティ)開発の裏側を公開します!

IGIの特徴であるパーパスブランディングとCI/VI開発。今回は、IGIのブランドロゴ策定プロジェクトを全部知ってる3人のデザイナーに声をかけて、集まってもらいました。普段は世の中に出ることがない、アイデア段階~案選考~決定までのVI開発プロセスをあますことなく全て公開します!

Art Director

木野村 繁則Shigenori Kinomura
広告代理店を経て、2000年たき工房入社。ディレクターとして広告を始め、企画からデザインまでさまざまな分野のクリエイティブディレクションを行う。現在VIチームのチームリーダーとして多くの企業のVI開発に携わる。趣味は庭いじり。

Chief Designer

阿部 友美Tomomi Abe
女子美術大学短期大学部専攻科卒業。デザイン会社数社を経て、2014年株式会社たき工房に入社。CI、VI専門チームでロゴやマニュアルの制作を担う日々。趣味はご当地牛乳パックやノスタルジックな建造物、町並み、遺構などを求めて写真を撮ること。

Designer

白田 翔Kakeru Shirota
桑沢デザイン研究所総合デザイン科でビジュアルデザインを専攻。課題に対してアイデアやコンセプトを取り入れたデザインを得意とする。2019年たき工房入社後は、デザイナーとして企業のロゴや広告、モーションデザインなど様々な領域のデザインに関わる。

IGIのロゴ拝見しました。最初から結論を聞いてしまう感じになるのですが、IGIのロゴって、かなり王道というか、シンプルなデザインだと感じています。けっこうすんなりと決まったのですか?

木野村:最終的なデザインとしては、かなりシンプルなものを採用することになりました。それでも社内とはいえ丁寧なプロセスや議論を重ねているので、すんなりという感じはなかったですね。選考の回数としては何回したんだっけ?

白田:簡単に段階だけで説明するとこんな感じですね。
1-オリエンテーション
2-チーム内で公募して80案強集まる
3-1次選考(80案を9案に絞る)
4-2次選考(9案を3案に絞る)
5-3次選考(3案から1案外す)
6-最終選考(2案から1案決定)

阿部:オリエンテーションしたのが10/28で、決定したのが12/2なので、ほぼ1ヶ月ぐらいですね。

通常と比べて、長いほうですか?

木野村:通常と比べると短いとは思いますね。ただし、この1ヶ月はデザイン工程(スライドの3の項目)だけなので、めちゃくちゃ短いというわけでもないですね。


プランナーやプロデューサーの方からもアイデアレベルでも構わないので応募してください(白田)
VIって社内からの納得というのもとても重要な要素なんですよ。(木野村)

最初のオリエンテーションはどんな感じで始まったのですか?

阿部:IGIの中でカンパニーロゴをつくろうという話になって、ロゴプロジェクトが立ち上がり、その担当者としてVIチームの私たち3人が選ばれたんです。3人で集まって、進め方を話し合った上で、言語化までは終わっていたので、パーパスとステートメント、ブランドパーソナリティが明文化された資料を作成して、そこに制作条件や留意事項などを記載してチーム内で公募しました。

白田:デザイナーはもちろん、プランナーやプロデューサーの方からもアイデアレベルでも構わないので応募してくださいと伝えましたね。

木野村:VIって企業の顔なので、社外からの共感を得ることが最大の目的ではあるんですが、社内からの納得というのもとても重要な要素なんですよ。自分たちのVIを社内が納得して使用していくために、透明性を保って均衡していくことって重要だと考えています。

1次選考で、80案を9案に絞るときには、どのようなことをしたのですか?

白田:3つの基準を設けて、80案を9案に、一気に絞っていきました。
1|ブランドパーソナリティが体現できているか?
2|デザイン性の高さ、IGIのオリジナリティが担保できるか?
3|コンセプトの強さ、コンセプトの妥当性や共感性


阿部:具体的には、基準ごとに3×3票ずつ、一人9票持った状態で、基準を満たしていると感じるものに全員で投票していきました。その上で、3つの基準に全て票が入っている案(1~3の基準全てを満たしている)を2次選考に進む案としました。

木野村:この段階では案を決めるというよりも、妥当性を担保して案を絞ることが目的なので、3つの基準全てを満たしているものを残しています。例えば他と比べて圧倒的にデザイン性の高さに得票を集めたものがあったりしたら、それも例外的に残したりしますね。とはいえ、クライアントワークの場合この工程はいわゆる社内検討段階です。提案する案の数によって、どこまで残すかを考えたりしています。

10年後をイメージしたときにどう感じるか。
流行に左右されそうとか、一過性のインパクトが強そうとか(阿部)
投票するときにコメントを必ず書いてもらうというのも、客観的な評価を明確にするため(白田)

9案に絞ったのちの2次選考も同じように投票して決めていくのですか?

木野村:基本的には投票で決めていくのですが、まずは残った9案を1つのフォーマットでまとめなおしました。アイデア段階では、ビジュアルに入れたら良くみえるとか、Tシャツにするとかっこいいとか、色んなアイデアも合わせて考えているので、一旦このようなバイアスをなくすために、ロゴ単体のみのフォーマットに調整しました。

白田:そのあとで2次選考の前に残った9案に対して、分析というか整理をしていき、その情報をみんなに共有しました。まずは、「得票総数」「得票のバランス」。1次選考でどの基準に対して何票獲得したのかいう結果と、票数のバランスが良い(基準ごとの得票数が近い)ものを一覧で見れるようにまとめています。

阿部:他には「耐用年数」と「競合他社との比較」という資料もまとめました。この工程は私たち3人で話し合って決めていったのですが、耐用年数というのは、例えば10年後をイメージしたときにどう感じるかといった観点です。流行に左右されそうとか、一過性のインパクトが強そうとか、感じるものは耐久性が低いといえます。

木野村:もちろん制作するロゴの目的というか、使用する想定年数によって、選ぶ基準は変わってきます。どちらがよいというものではなく、目的に合うかどうか。例えば、10年後も使用したいと考えているのに、今目立ちそうなものを選んでしまうとあまりよくありませんよね。そういう視点を提供することもVI制作のプロセスとしては重要なんです。

競合他社との比較というのは、そのまま競合と並べて検討するということでしょうか?

阿部:そうですね。一緒に並べたときにどのような印象となるかを検証するためです。ただし、そのまま並べるわけではなく、競合のロゴを4象限の中にプロットしたものに対して、9案のデザインがどのポジションと捉えられそうかをデザイン面で判断しながら、落とし込んでいきました。


白田:残った9案について分析した資料を共有して、やっと2次選考の投票という流れですね。2次選考ではシンプルに一番好きなロゴとその次に好きなロゴを選んでもらい、その理由もコメントとして必ずつけてもらうという方法にしました。

好きなロゴという判断基準だと感覚的になるような気がするのですが、そうした意図はなんでしょうか?

木野村:私たちは、VIを企業の顔をつくっていくことだと捉えています。簡単に言ってしまえば、「あ、この顔なんか好きだな」って思ってもらうことがゴールなので、論理的に必要な要件を満たすだけではいけない。ある意味直観というか感情を揺さぶることができるかどうかが大事なんです。それと、使用する側(今回の場合はIGIのメンバー)が、誇りをもってそのVIを使用していけるかどうかもとても大切なポイントですね。

阿部:少し補足すると、好きなロゴを選んでもらっているのですが、単純な好き嫌いにはならないように先ほどの分析資料を共有しています。そのロゴが持っている客観的な特徴や分析結果をインプットした上での判断になるので、投票する人たちの間での認識にズレがないようにするのが狙いですね。

白田:投票するときにコメントを必ず書いてもらうというのも、同じです。2次選考では結果的に、9案から3案を残すことにしたのですが、このコメントがあとで効いてくるんです。というのも、残った3案で決選投票をしていくときに、ロゴAはこういう部分が評価されていますとか、ロゴBはここが魅力ですといった、客観的な評価が明確になるんですね。それらの魅力と特徴をまとめて、「フォルム・形状・耐久性のA案」「カタチ・独自性のB案」「意味合いのC案」としました。


木野村:3案に絞られたあとは、商標登録の簡易調査をしました。通常のクライアントワークでも、だいたい2~3案を最終残してもらって、弁理士を通じた商標登録調査をします。「決まった1案を調査すればいいのでは?」という質問を受けることがよくあるのですが、長い期間使っていくものなので、もしダメだった場合に他の妥協案を採用することになってしまうと、どうしてもネガティブな感情が沸いてしまう。そうならないために私たちは複数案を調査することを推奨しています。

そんなところにも、使い続けてもらうための気遣いがあるのですね。

それぞれの良さを組み合わせても、反対に良くないものになってしまうため、適正でない(阿部)
その過程が制作側にも、クライアントにも共有されながら、VIをつくる。これが今の時代に合った、正しいやり方(木野村)

阿部:やっぱり愛着をもって使ってもらうことを最優先していますね。実はこの段階で、VIデザイナーとしてC案に対して、少し懸念を持っていました。簡単にいうとIGI(イギ)と読めるかどうかです。いわゆる可読性なんですけど。パッと見て“iとgとi”の集合だと読めないと感じていまして。そもそも英字表記としては読みづらい“IGI”という文字ですし、今はまだこの社名を覚えてもらいたいタイミングなので、検証した上でその懸念をみんなに伝えて結果的にC案は検討から外すことになりました。

そうですよね。立ち上がったばかりの会社で、知ってもらいたい時期ですもんね。あとは2択ということかと思うのですが、決選投票で決まった感じですか?

白田:結果だけをお伝えするなら、みんなで投票してその得票数で決まったといえるのですが、そこまで一筋縄ではいきませんでした。投票結果の割合がちょうど60%:40%。例えば、A案が80%かそれに近い割合だったとしたら、たぶんすんなり決まっていたと思います。

木野村:クライアントワークでもよくあることで、どちらも捨てがたいという感じでした。あらためてみんなで議論している中で、両方の良いところをくみ取った折衷案にすることはできないかという話になり、検証してみることになりました。

阿部:もちろん折衷案がうまくいくことも場合によってはありますね。でも、今回の場合だと難しいという結論でした。かっちりしていて、色んな使い方をしてもバランスを取りやすいA案と、ランダム感というその不安定さが魅力で、使い方によって上振れも下振れもするB案。それぞれの良さを組み合わせても、反対に良くないものになってしまうため、適正でないという判断となりました。

白田:そんな話し合いを続けていく中で、残っているA案とB案どちらも同じデザイナーの案だったこともあり、もう一度コンセプトからプレゼンテーションをしてもらいました。すると、A案のコンセプトの強さに、あらためてみんなが納得してしまうという現象が起きて、だったらA案がふさわしいねという合意が形成されたんですよ。

木野村:結果としては、A案に決まったことも、その合意形成のプロセスも良かったと思っています。昔だとわりと、個人個人のプレーで、ブラックボックスなところがあった。アウトプットだけ100案見せて、投票数だけで決めるみたいな。だから、その過程が制作側にも、クライアントにも共有されながら、VIをつくる。これが今の時代に合った、正しいやり方なんだと思いますよ。


本日はありがとうございました。

(文/つかもとちあき)

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